「にゅう」「にう」「ニュー」白駒池から「にゅう」に登る途中の道標には3通りの記載があった。この名の由来は何なんだろう...この日記では昭文社の地図通り「にゅう」としておく。
僕に山の楽しさ教えてくれた上田市に住む師匠F君と久々の登山だ。実はF君、1月にアイスクライミング中に滑落。両足首を手術、まだまだリハビリ中の身。日常生活でも足の着地角度によっては激痛が走るようだ。
ならば登山と言うより散策という感じで霧が峰でも行かないかと誘ってみたが、この連休、人が多いだろうということであまり乗り気ではない。じゃどこなら行けるかと話し合い、ハード過ぎず、軽すぎず、まだ行ったことのない八ヶ岳の「にゅう」にしようということになった。
雑誌にも時々取り上げられ、お手軽に行ける展望の利いた景勝地でもあるが、昨年、天狗岳から見下ろした眺めが良さそうな絶壁の岩が印象深く頭に残っている。
昨夜のお酒のせいで午前11時半登山開始と遅い出発。しかし山頂まではコースタイム2時間のお気軽登山だ。遅い出発ということもあり、心配した雷雨もあまり心配なさそう。
さすがに連休ということもあり麦草峠の駐車場からは車が溢れ299号には路上駐車の列ができていた。ちょっと歩けば行ける白駒池には観光客で溢れかえっていた。景色そのものは良い雰囲気だが、こうも人が多いとそれを楽しむ気持ちにはなかなかなれない。白駒池には手漕ぎボートすら浮かんでいた。
青苔荘の脇のテン場を通る。池の畔でいい雰囲気。どの季節なら人が少ないだろうか...いつかここで登山せずとも気の合う仲間たちとお酒を飲みながら夜を過ごしてみたいと思った。
白駒池の周遊道を外れると一気に人が減る。苔の生い茂った八ヶ岳の森の雰囲気は、何度来てもやっぱりとても好きだ。
綿毛の花が咲き乱れた小さな湿原を通り過ぎ、良く整備された登山道を進む。それ程、きつい登りもない。ストックをうまく使い、時々、岩に置いた足が滑り痛みを感じているもののF君は快調なペースで登って行く。体力的にはほとんど落ちてないように思える。
程よく登山者とすれ違うが、他の山に比べて八ヶ岳は、若い女性の割合がかなり高いように思える。挨拶を交わして、ちょっと話す。これはこれで楽しくないはずはない(笑)
次第に背丈を低くした木々の茂った尾根の向こうから光が差し込んでくる。尾根の頭頂筋のようだ。
「にゅう-中山峠」分岐の道標を左に進むとすぐに反り立つ岩場が現れる。「にゅう」だ。三点支持でちょとだけ岩を登り、その上に立つ。岩場の南東側は切れ落ち結構な高度感を感じる。
蓼科山、北八ヶ岳の山々、先程通った白駒池、高見石、東・西天狗岳、硫黄岳、そしてその眼下にしらびそ小屋...360度ぐるりと素晴らしい景色。今日は、昨日ほど暑くはない。陽が陰ると少し寒さを感じるくらいだ。
30分ほど景色を堪能し下山開始。
登りよりも下りの方が足に負担が掛かりそうで心配していたF君も順調に下山していく。途中、濡れた倒木を踏み外し、かなり痛そうだったが何とか無事に麦草峠まで戻ってくることができた。
恐らく彼にとってはまだ早すぎた登山だっただろう。これくらいの登山でも、もし途中で何か起こったら相当大変な状況になっていたのは間違いない。彼自身、それを痛感していた。
「今年は、もうちょっと厳しいが、リハビリして来年は雲ノ平に行きたいねェ。」夜、お酒を飲みながら来年の予定がひとつ立った。
僕は僕で、テン泊縦走できるようにテントとシュラフを買わないと!