2019年8月27日(火)16:05

やっぱり年に一度は行っておかないと!南アルプス両俣小屋でイワナ釣り

それにしても長い長い今年の梅雨だった。昨年と1ヶ月違えば夏山に行ける時間もずいぶんと短くなってしまう。

今年もどのあたりで5泊くらいの縦走に行こうかと考えていたのだけど、8月最初のなかなか天気も良かった時期はちょっと外せない所要で行けず、何となくお盆辺りからにしようと思っていたら立て続けに発生した台風9号、10号の影響で不安定な天候が続き、また昨年と同じように行かずじまいで夏山が終わってしまうのだろう…と何となく思い始めていた。

そう。そして、今年は僕が今住んでいるところが海のすぐ近くということもあって、ここに住み始めて既に10年経つのだが中々始める機会がなかったサーフィンをとあるきっかけで始めて、その楽しさとすぐ近くで遊べるという手軽さでのめり込み、山に行けないなら行けないで毎日サーフィンをしていればいいかなと何となく思う心もあった。

お盆が終わり10日間天気予報を眺めていても相変わらずどこもここもぐずついた予報がばかりであまり期待できなかったのだが、週の中ほどになると週末から翌週あたまにかけて4日間ほど晴れが続きそうな予報に変わった。もちろん、この期間では長期縦走という訳には行かないのだけど、このまま一度もアルプスさえ行かずにやり過ごしてしまうのもどうかなという思いもありどこかに行ってみようと思った。

じゃどこにするか?7月に歩いた八ケ岳が何だかえらくきつかったので20kgのザックを背負って山を登るのにちょっと不安もあり、だったらもうひとつの趣味である釣りも兼ねてイワナを釣りに両俣小屋に行ってみることにした。

両俣小屋は昨年2度行き散々飲んで釣り談議をしてあまりに楽しく過ごしたところだ。そして何となく顔を覚えてもらったかな?というのもあり年に一度は行っておきたいなというのもあった。

小屋について挨拶をするなりにここの小屋番であり僕なんかとはレベルが違う釣りキチの牧野さんに「あーまだ山やってたんですね」と声を掛けられた。苦笑。どうやら僕が最近のめり込んでよくFACEBOOKにアップしているサーフィンのことを皮肉交じりに掛けられた言葉のようだった。それでも覚えてもらえたことがとても嬉しかった。

日曜日の両俣小屋は宿泊客も少なくとても静かだった。北アルプスはいつ行っても登山者が多く華やかで洗練された大きな小屋が多いが、僕はやっぱり南アルプスの小屋の雰囲気の方がどこも個性的で好きだ。北アルプスの小屋が居酒屋チェーンなら、南アルプスの小屋は個人オーナーが出している飲み屋という感じだろうか。と言って昔ながら過ぎるという訳でもなくきらりとした個性を感じる。多分にもれずここ両俣小屋の女性のご主人の星さんもとても個性的な方だ。その雰囲気が小屋によく出ているように思う。

受付を済ませてテントを張ると今回は通ってきた登山林道を40分程戻った荒倉沢のちょっと下流にある野呂川本流から入渓して釣った。ここから釣り上がるのは初めてだったのだけど、小屋より上流の左俣沢、右俣沢とは異なり割り合いフラットな流れが続くフライフィッシング向けの渓相だった。基本的に狭い沢の小さいポイントに毛鉤を打ち込むような釣り方が好きだが、思いっきりフライラインを出して遠くのポイントを狙うのもまたこれはこれで楽しいなと思った。

イワナのサイズは結局27cmどまりだったけど数も出てそれなりに満足して夜はまたマニアックを極めた釣り談議に花が咲いた。それにしても小屋番の牧野さんはとても手が及ばないほど釣りの兵だ。あまりに学ぶことが多すぎて(笑)

翌朝、昨日、満足したはずだったのだけど朝6時から竿を出した。朝早くは水温が低すぎて釣れないのだけどやっぱりイワナの川を前にして我慢するのは難しい。反応は良くなかったけど3時間で6尾キャッチして10時に川をあがった。結局、サイズも昨日と同じ27cmどまりだった。

いずれは尺上(30cm以上)を。焦る必要はないまた来年も絶対に来よう!後ろ髪を引かれながら両俣小屋を後にした。

ルートマップ

ルートデータ

入山日
2019/8/24
下山日
2019/8/26
距離
17.4km
最高点
2,013m

トレッキングレポート

山に行く日だが今日はアプローチのみ。甲府からバスに乗って広河原まで行くだけなので遅い出発で11時過ぎの電車に乗ればいい。なので朝4時半から7時までサーフィンで海に入る。
あずさに乗って甲府駅へ。駅前のコンビニで500mlのビール&チューハイを買う。13時55分のバスに乗って広河原へ。
甲府駅から2時間ほど掛けて広河原へ。今日の行程はここまで。ビジターセンターの向かいの山が削り取られて整地されていた。広河原山荘が来年ここに移動してくるらしい。テント場はどうなるのだろうか?

バスには中国もしくは台湾人の若者グループが乗っていた。ちょっと軽装だったので多分芦安温泉に行くのだろうと思っていたら広河原まで降りなかった。上高地は今や様々な国の観光客を見るようになったがインバウンドの波はマイナーな南アルプスまで押し寄せているようだ。
広河原山荘のテント場。川沿いにあり気持ちの良さそうなテント場なので一度ここでテント泊してみたいと思っていた。サイトもフラットで快適だった。ここまでは交通機関だけで楽にアプローチできるので普段マイカーで釣り歩いているアングラーたちにとっての南アルプスのイワナ釣りのメッカだ。テント泊の半分くらいは釣り人のようだった。
夕まづめのいい時間帯なのだが竿を出すには遊漁券(1000円)が必要なので、たった1時間ほどのために遊漁券を買うのはバカバカしいのでテントを張ったら小屋の前のベンチに移動してすぐに夕食にする。取りあえず持ってきたビールを飲む。
夕闇迫る広河原山荘。この週末の連続した晴れを逃すまいと広河原山荘は結構な登山客が泊まっているようだった。
8月25日、快晴の朝だ。広河原山荘からバス停に向かう道から北岳がきれいに見えている。大樺沢にはまだまだ雪渓が残っている。今回は釣りで来ているが久しぶりに登ってみたくもなる。
広河原6時50分の北沢峠行きの始発バスに乗ってその途中の野呂川出合に向かう。この区間、いつも歩いてみようかなと思ったりするのだけど、バスだとたった15分だが歩くと2時間ちょっと掛かると思うといつもめげる。
野呂川出合到着。ここから両俣小屋まで2時間半ほど歩く。やっぱり釣り道具が入っているとザックが重たい。
山間に差し込む太陽の光の筋がきれいだ。この夏は毎日のように海ばっかり行っていたけど、やっぱり山の澄み切った空気は気持ちいい。
アサギマダラ。この蝶は「渡り蝶」で秋になると多くの個体が沖縄から台湾に渡っていく。このひらひらと羽ばたく小さい蝶がどうやって海の強風を押し切ってそんな遠くまで飛んでいくことができるのか本当に驚くばかり。
9kmほどある長い林道歩き。今年は崩落個所が多かったようだ。
アキノキリンソウ。名前の通り秋を代表する高山植物だ。下界はまだまだ暑い日が続くが山には確実にもうそこまで秋がやってきている。
それでも強い日差しにさらされるとさすがに暑い。所々にある滝の脇を通り過ぎると心地よい風が吹いていて涼しい。
登山林道を振り返るとどーんと存在感を主張する甲斐駒ヶ岳。迫力がある。
雲ひとつない空。快晴です。このまま今日一日釣りをしている間ずっと持ってくれればー。
両俣小屋まで15分の看板。あとちょっと。ここを下ると川沿いに出る。
川沿いに出る。相変わらずワクワクする渓相。今すぐにでも竿を出したい気分になるがまずは小屋についてテントを張ってからー。
道すがらポイントポイントで必ず見えるようにイワナがスポットしている。このポイントにも3尾ほどイワナがスポットしていた。こいつは30cmくらいはありそうだ。
両俣小屋のテント場。1張りのテントもないではないか!今夜はほぼ独占状態になりそう。
両俣小屋。テント泊の受付をしてビールを1本買う。ほぼ1年ぶりだったが小屋番の牧野さんが僕のことを覚えていてくれて嬉しかった。
さっき着いたばかりの小屋でビールを買って飲んだのだが、さらにテントを設営しながら持ってきた500mlのチューハイを景気づけにもう1本飲んだ。
小屋より上流の左沢と右沢にはすでに先行者が入っているということだったので、今日まだ人が入っていない荒倉沢下の野呂川本流からの入渓をすすめられた。小屋からさっき歩いてきた林道を40分ほど戻った護岸された崖の脇から川に下りて行く。

かなり急峻な崖だ。下りる途中で転がって行かないように慎重に下る。登山道だったら必ずクサリやロープなりがついているが釣り人はクサリもロープもないこういうところをいとも簡単に下りたり登っていったりする。しかも時には片手に釣り竿を持ってだ。

釣り人の獲物を捕まえたいという欲望は危険を顧みることを通り越したもの凄いものがあるなと思う。
たった今下りてきた崖を見上げる。この護岸の向かって右側の縁を下りてきた。高さ40メートルほどはあるだろうか。
ロッドを継ぎリールを付けてガイドにラインを通してフライを結んで…さて、ここから釣り上がる。川幅があり比較的フラットな流れのフライフィッシング向きの流れが続く。そして程なく20cmほどのイワナがあがった。
程よくアタリを獲りながら現れたひとつ目の堰の右側を巻く。この落ち込みもじっくり攻めてみたかったのだが滝から吹き出す風が冷たくて凍えるほど寒くなりすぐにやめた。
荒倉沢から5時間ほどで釣り上がり釣れた今日一番のサイズの27cmのイワナ。久しぶりの南アルプスの釣りを十分楽しむことができたが尺には届かなかった。
小屋の前のテーブルで夕食をとる。途中から小屋番の牧野さんや小屋に宿泊している釣り客も出てきて楽しい釣り談議が始まった。それにしても牧野さんの釣りへのこだわり度には感服した。エルクヘアカディスのことだけで数時間は語れる感じだった。僕もそれなりに釣り好きだがとてもとても敵わない。
昨夜も例のごとく持ってきたウィスキーを空けてしまったが、朝6時に目が覚めるとすぐに竿を持って川に入った。昨日は昨日でもう十分に満足したので今日はもう釣らなくていいかなと思っていたのだが、この写真の場所で最後に逃した大きめのイワナのことが気になってもう一度竿を振らずにはいられなかった。

ここはテレストリアル(陸生昆虫)の川だからある程度日が昇って暖かくならないと釣れないということは承知の上でも…
今日も天気は良さそうだが、日がまだ差し込まない谷でウェーディングしていると凍えるほど寒い。
釣れない時間帯とは言え、今日、僕が帰る最終日ということをイワナたちが察してくれたのかそれなりに楽しむことができた。
そして両俣小屋主催で毎年行われている『イワナ美人コンテスト』というここで釣れたイワナの写真コンテストに出展する写真も撮りたかった。このあたりにしてみようか。
昨日と同じ今回の釣行で一番大きいサイズになる2尾目の27cmのイワナ。
下山のバスに間に合うように10時に川から上がる。平日月曜日ということでがらんとした両俣小屋のテントサイト。僕の他に3張りほどあったのだが既にそれぞれ目的の場所に向かったあとだった。
テントを撤収して小屋に帰りの挨拶をしに行くと小屋番の牧野さんがこれからちょっと竿を出すところだった。それをちょっと覗いて行きたいところだったがバスの時間があるので叶わなかった。「来年もまた来ます!」と伝えて小屋を後にした。
今年は熊の出没がとても多いということだ。この場所でも昨日、熊が目撃されたらしい。それどころか昨日は登山客で賑わう広河原のバス停で手負いの熊が走り回ったという無線が小屋入ったということだった。気をつけても偶然の遭遇だけはどうすることもできないがところどころで大声を出しながら帰りの林道を歩いた。
昨日、大きそうな一尾を逃した瀬を林道から見下ろす。「バイバイ。また来年も必ず来るよ。」
帰り道、またアサギマダラがひらひらとまるで道案内するように前を飛ぶ。そして花に留まったところをできるだけ近づいてズームアップして撮る。模様もきれいになかなか良く撮影できた。
行きはイワナのことばかり考えて歩いていたのだろうか?花も見ながら歩いていたつもりだったが見落としていた花がたくさんあった。これはシャジンの一種だろうか。
午後になると次第に稜線に雲が広がり雨が降りそうな気配になった。どうやら明日まで晴れる予報だったのだが、明日はもう雨模様に変わったようだった。
バス停のある野呂川出合に到着。今日、熊ノ平から下ってきたという女性がすでにバスを待っていた。声を掛けるとハキハキと話すにこやかな笑顔が素敵なとてもフレンドリーな人だった。

入山時、東京から甲府まで最終電車に乗ってきて夜を駅舎で過ごし、翌朝一番のバスに乗ってアクセスしてきたというメンタルもとてもタフな女性だった。こういう人と話すのは楽しい。

勤めていた会社を辞めてその間に今は好きなように山を歩いているということだった。またどこかで!
今回は芦安で温泉に入るためにバスを降りずに甲府駅までやってきて風呂に入って帰ることにした。駅から一番近い銭湯(温泉)ということだったが15分ほどは掛かった。ただまわりに迷惑を掛けないように風呂に入ってきれいさっぱりして電車に乗りたいだけなので温泉である必要はない。駅周辺にあるホテルあたりで日帰り入浴をさせてもらえるところはないものだろうか。それなりに儲かると思うのだが。

甲府の銭湯までの道のりは昭和風情が色濃く残る何か懐かしい街並みだった。ひなびた本屋の前に設置された(今はもう使われてなかったが)その昔、大人の雑誌を売っていたと思われる雑誌の自動販売機を久しぶりに見た。
NHK BSで時々やっているとつい見入ってしまう番組のひとつ「駅ピアノ」と「空港ピアノ」。世界中の空港や駅に設置された誰でも自由に弾いていいピアノを一般の人が弾くいているのを流してちょっとインタビューするという番組。日本では横浜の関内とかにはピアノが置いてあるみたいだが、ここ甲府駅にもあったのにはびっくりした。期間設置のようだったけどサラリーマン風の男性が通りがかった時に弾いていた。歌う以外全く何も音楽はできないけどできるとカッコいいなと最近常々思う。

データ

  • 入山日: 2019年8月24日(土)
  • 下山日: 2019年8月26日(月)
  • 登山エリア: 南アルプス
  • 登山ジャンル: その他
  • 登山スタイル: テント泊
  • メンバー: ソロ
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