2018年7月30日(月)16:21

南アルプスのイワナ釣りの聖地!憧れの両俣小屋でフライフィッシング

北の薬師沢、南の両俣と言われるほどの渓流釣り師たちの聖地 南アルプスの両俣小屋に今回は釣り目的だけのために行ってきた時のレポート。ここは今では希少種となったイワナの一種ヤマトイワナの生息地だ。

両俣小屋周辺の沢はキャッチ&リリース域だけあってさすがに魚影がすこぶる濃くて驚いた。ここぞと言うポイントでイワナが次々に跳びだしてくる。15尾くらいまで数えたが数はもうどうでも良くなった。まさに渓流釣り人のシャングリラだった!

そして夜は集まってくる釣りキチたちと酒を飲みながら夜遅くまで釣り談議。釣りキチ小屋番Mさんも交えて泊まった二夜とも夜更けまで宴が続いた。2日分と思って持ってきたウィスキーはあっという間に初夜でなくなったが、二日目はどこからから数本の一升瓶の焼酎が出てきた。

両俣小屋は釣りも人も本当に素晴らしい小屋だった。あまりの満足に、この釣りバカの自分が3日目の早朝は沢を前にロッドを出すことなく帰途についていた。どこを切り取っても素晴らしい南アルプスの山奥の川。今年中に何とかもう一度来ようと思う!

ルートマップ

ルートデータ

入山日
2018/07/14
下山日
2018/07/16
水平距離
17.4km
最高点
2,013m

トレッキングレポート

Day1 : 7月14日(土)

いざっ両俣小屋へ!が、ちょっと恐怖さえ感じた南アルプス登山バス

梅雨が明けた海の日の3連休しかも快晴とくれば、その初日の朝の信州方面行きの電車に座れるなんて期待もしていなかったのだが8時31分八王子発のあずさ5号が到着すると自由席はデッキにまであふれかえるほどの人でいっぱいだった。一年で最も山が混むこの海の日の連休にわざわざ来る必要もなかったのだが、この機会を逃すとまたずるずると先になってしまいそうだったので行くことにした。

今回は山行というよりも釣行と言った方が正しいかも知れない。両俣小屋。北アルプスの薬師沢、南アルプスの両俣と言われるほどの渓流釣りをする人たちの間ではよく知られた、そして以前からずっと行きたいと思っていた南アルプスのイワナ釣りの聖地にある小屋だ。

実は2年前に一度、両俣小屋にイワナ釣りに行くチャンスがあったのだが前日に大雨が降りザックに詰め込んだフライタックルを眺めつつ泣く泣く行くのを断念したのだった。

甲府駅で降りると広河原行きのバス停は南アルプスに向かう登山者で長蛇の列だった。臨時便を含めて3台のバスが来たのだが座ることはできず甲府駅から広河原までの曲がりくねった南アルプス林道を約2時間立ちっ放しだった。

甲府駅で混雑した分だけ運行が遅れていてるのか乗車したバスはスピードを出しているだけでなく運転がとても荒い感じだった。芦安を過ぎ本格的な山道に入ると広河原に着くまでに登りカーブで3回もエンジンストップしてしまった。高く切り立った南アルプスの縫うように走るこの南アルプス林道は道路際が数百メートルは切れ落ちた崖のところが続く。正直、こんな運転で大丈夫なのだろうか?と命の危険さえ感じるほど不安を感じる運転だった。

そしてバスのトラブルは往路だけではなく帰路でも起こった。登山バスは竜王駅を過ぎて甲府駅に向かっていた。おそらくあと10分もあれば甲府駅に到着する辺りだろう。右折の信号待ちをしている交差点で突然バスのエンジンがストップしてしまったのである。運転手が何度も何度もエンジンを掛けようとするのだが停止したエンジンは一向に掛かる気配がない。

この日も甲府は37~38℃に迫るような暑さの日でエンジンが止まってエアコンが切れた満員の車内の気温は蒸し風呂のようにどんどん温度が上昇していった。乗客皆で窓を開けて対応したが入ってくる風は熱風で暑さで汗がどんどん噴き出してくる。

運転手が無線で本部にこの緊急事態を掛け合っているがすぐに対応できるはずはなくバスは道路の真中で立ち往生したままだった。いずれにしても代わりのバスが迎えに来るまでここで缶詰状態になるのだろうなと覚悟して10分~15分ほど経った時だろうか、運転手が回したエンジンがプスプスプスプス...という鈍い音の後に何とカラカラカラカラッと回り始めたのだった。

バスの中は一同わっと拍手が沸き起こった。その後も何ともあやしいエンジンの回転状態だったがエンジンは再び止まることなく何とかバスは甲府駅までたどりついた。

見る限り行きも帰りもかなり古いタイプのバスだった。山梨交通しっかりしてくれよっ!

たった3時間の林道歩き。その先には天国が待っている!

何とか無事、広河原に到着してほっとする。1時間ほど待って北沢峠行きのバスに乗り継ぐ。15分程で両俣小屋への分岐点 野呂川出合に到着。野呂川出合で降りた乗客は4~5人だけだった。

バスの中でたまたま隣に座ったフライアアングラーと話す。両俣小屋まで行くのかなと思ったが野呂川出合辺りから入川して釣り上がり、また夕方にはテントを張った広河原まで戻るということだった。よくここに釣りに来ているというそのアングラーに、せっかくここまで来ているのに両俣小屋まで行かないのか?と尋ねると3時間近く林道を歩かないといけないのでそこまで行く気にならないのだという。

何となくわかるような気がした。ここ10年ほどは釣りよりも山登りをメインにしてきたので「3時間の歩き」というと近いなという感覚になることができるが、思い返せば釣りをメインにしていた頃は車道からすぐ入れる川か歩いてもせいぜい30分ほどのところにある川でしか釣りをすることがなかった。そして釣っている最中に時々出会う登山者を見ては「よくもまぁわざわざ何時間もかけて山に登るよなぁ。」と奇怪な目で彼らを見ていたものだった。その自分が「3時間なんてちょっと」という感覚になっているのが面白いものだ。

ただ去年、黒部の源流を釣り歩いて分かったことは、その数時間を歩くことによって car to fish の川とは全く違った世界があるということだ。

「釣り人が多い」、「春先なのにすでに魚が釣り切られている」、「支流が違うだけで管理が代わり別の遊漁券がいる」、「堰に次ぐ堰で川が分断されている」、「ニジマスなどよく分からない放流をする」、「ゴミだらけ」...

列挙すればきりがないほどの川釣りを取り巻く状況に辟易して、ここ10年ほどはあれだけシーズン中に行っていたフライフィッシングも気持ちよく釣りをすることができる九州の地元に帰った時くらいしかしなくなっていた。

「遠くまで歩けばいい川がある」こんな当たり前のことに気づくのにこんなに時間を要したことはちょっともったいなかったように思う。
甲府駅のコンビニエンスストアで500mlビールとチューハイを3本購入。野呂川出合でバスから降り準備を整えていざ歩き出す前に気合入れに一本空ける。これも大切な準備のひとつだ。
野呂川はまだまだずっと谷の下を流れている。にもかかわらずそこで竿を振る釣り人を何組か見かけた。下流から登ってきたのか?それともどこかからロープでも使って下りたのか?釣り人の通る源流の沢沿いの道のことを「欲望の道」というのを聞いたことがあるが、釣り人の狩猟欲というか狩猟本能には本当に驚かされる。
小仙丈沢の渡渉。前の週に降った大雨の影響でまだ橋の上まで水が出ていた。ローカットの靴を履いていたので靴を脱いで渡渉する。
北岳と仙丈ケ岳に挟まれたこの谷を流れる野呂川沿いをずっと歩いて行く。
野呂川出合から両俣小屋までは若干登り基調のこんな林道をコースタイムで2時間半ほど歩く。当初はずっと谷の下にあった野呂川がときどき近づいてきて「おっ両俣小屋ももう近いのかな?」と思えばまた遠ざかる。なかなか近づかない。
ヤマオダマキ。林道沿いにはこのヤマオダマキとホタルブクロの花がよく咲いていた。
ヤマレコなどでときどき見かける「両俣小屋まであと43分17秒」の標識。テント泊装備を持ってこの時間で到着するのは結構厳しい。実際、途中で釣りをした時間を除いても50分弱ほどは掛かった。
「43分17秒」の標識辺りから見上げると北岳の稜線がきれいに見える。その中央に北岳肩ノ小屋も見えている。人気の北岳、海の日の3連休初日、今日は相当に混むことだろう...

野呂川最上流C&R区間最初の1尾を釣りあげる!

小屋まで恐らくあと10分くらいのところ川の真横にある登山道が少し高くなった所から岸際にある大石の裏の淀みをのぞき込むと真っ黒いイワナが表層の昆虫を捕食しているのが見えた。なかなかのサイズだ。

すでに4時前で先を急がなければならないのは重々承知の上だか釣りバカとして、こんなのを見てしまうとどうしても竿を出さずにはいられない。

分かってる。明日になれば嫌になるほど朝から晩までつりをする事は出来る。だが、そんな問題じゃない。今はもう目の前にいるあのイワナをただただ捕まえたいのだ。これは本能だ。

犬が転がったボールを獲物ではないとわかっていながらも追いかけてしまうのと同じ。釣り人は時にイヌやネコと大差ないほどの知能しか持ち合わせてないのかもしれない。いやもしかしたらそれ以下かもしれない。

沢に降りて7フィート6ピースのロッドに#3のラインを通す。5Xのティペットに、陽が傾てい薄暗くなると見えにくくなってしまう最近始まった老眼でもフライが良く見えるように、たくさんのエルクヘアを巻き込んだ#12のビッグフライを結び、まずはさっきイワナを見たのポイントより少し下の流れに下流から近づいてそっとキャストする。

さっき見えたイワナだけじゃなく数尾のイワナがこのポイント辺りにはいるようだった。スーッと一尾のイワナが追い掛けてきたが、この#12の巨大なエルクヘアを前に怪しさを感じたのだろうフライのすぐ手前で見切ってしまった。とは言え相手はイワナだ。何度かしつこくキャストを繰り返したが出ない。つづけてその上の本命ポイントにキャストする。

大岩の真上にキャストしたフライをその手前の淀みに昆虫が不意に岩から落ちてしまったようにゆっくりとフライを落下させる。落ちたフライが淀みで数秒間転がるように留まった後、そこから流れ出そうとしたまさにその瞬間、勢いよくイワナが水面を割って跳び出してきた。

瞬時に起こしたロッドに魚の重さを感じる。

しっかりとフッキングしたイワナが上流に向かって走り出す。その力強いイワナとのやり取りを楽しみながら少しずつこちらの方に寄せてきてランディングネットに収めた。22センチ程だろうか引きの強さの割には思いのほか小ぶりだった。

厳密にヤマトイワナとニッコウイワナ、さらに今はそのハイブリッドもいるというその区別は僕には分からないが斑点の濃い色黒の魚体、野呂川の最上流部で釣れたということを思えば多分ヤマトイワナなのだろう。

いつものことだがこの一尾をあげるとこの川と自分が一気に繋がった気持ちになる。そして、今日はこれで満足だ。このファーストワンの写真を撮ってからありがとうと言ってリリースする。

時計に目をやるとすでに16時半。10分くらいのつもりが30分も経っていたようだ。相変わらず釣りをしているとあっという間時間が過ぎる。

ロッドを片付けて先を急ぐ。川沿いのこの道は罪作りな道で困る。というのは至るところでイワナが見え、ついついぼーっと眺めてしまってなかなか足が先に進まない。ついに小屋に着いた時には17時を少し回ってしまっていた。
野呂川沿いに出る。いい渓相だ。ここからはイワナを探しながら川の中を眺めて歩く。
大岩の下に黒い影のイワナがフィーディングしているのが見える。もうここで我慢の限界。下流の岸に下りてロッドを出す。
17時に両俣小屋に到着する。もしかしたら相当に混雑していてテントを張るスペースがないかも知れないとある程度覚悟していたが、予想に反して広いテント場に15張ほどだった。
テント場の一番端側に雨が降ってもいいように覆い被さった木の下にテントを張る。地面が草地なのでペグも打ち込みやすく何よりテントが汚れなくて済む。後になって両俣小屋の小屋番Mさんから聞いたのだが、この一番端は熊の通り道だそうな...
両俣小屋の全景。まさに沢の横にある小屋なので常に沢の音が聞こえている。
そして、両俣小屋のすぐ前の野呂川の流れ。どこでもイワナが釣れそうな。そしていたるところでイワナが見えている。

終わらない釣り談議!釣りバカと呑兵衛の夜の宴

夕暮れが迫り小屋の前のテーブルで夕飯を作りながら持ってきたウィスキーでチビリチビリとやっていると同じようにこれから夕飯を作る人、一足早く夕食を済ませた小屋泊りの人が外に出てきたりして次第にテーブルまわりに集まってくる。そしてちょっとしたキッカケで話し始めると、知らず知らずの内に話が弾みじゃ飲みましょうかと言うことになる。

山小屋での一番楽しいひと時なのだが、ここ両俣小屋の夜は釣りバカと酒飲みが交錯するそれは楽しい夜になった。

中には毎週のようにやってくるという猛者もおり、自分の中で自分はかなりの釣りバカのうちと思っていたが、とてつもなく上には上の釣りバカがいるもんだと言うことを思い知らされた。まだまだ僕なんて可愛いもんだ。

そして、さらにここ両俣小屋の小屋番のMさんも相当な釣りバカのようで、初めてここに来た僕はあれやこれやとここでの釣り方についてスペシャリストの彼に教えを請うた。

一般的に釣り人っていうのは基本、釣れるポイントなんていうのはまず明かさないものなのだが、酔ってるのか、自慢したいのか、張ったりなのか、それとも嘘なのか…ここにいる皆はあからさまだった。

もちろん、もっともっとたくさんの秘密を持っているのだろうから、出せる情報出せない情報をちゃんと精査しながらなのかも知れないが、それだけこの川が隠しても隠さなくても大して変わりはないほどのポテンシャルがある素晴らしい川と言うことなのだろうなと思った。

この釣りバカの宴は23時過ぎまで続き2日分と思って持ってきたウィスキーはあっという間に1日でなくなってしまった。

そして、この宴はメンバーが代わった翌夜もどこからか出てきた3升の美味い焼酎を飲みながら釣りの話を肴に23時まで続いたのであった。

まさに釣りバカと酒飲みの天国のようだった。両俣小屋万歳だ!

※初日の夜は小屋前のベンチだったので、話し声が沢の音にかき消されず、さすがに少しうるさいと小屋番さんが怒られたようですいませんでした。

Day2 : 7月15日(日)

そうは言われてもやっぱり朝から釣っちゃうよね。だって釣りバカだもん。

飲んだウィスキーの量から言えば昨夜はちょっと飲み過ぎたようにも思えるのだが全く二日酔いもなく朝4時半に目覚めた。昨夜の釣り談議で小屋番Mさんから「ここは魚影の濃い川だから先行者がいても10分も経てばまたイワナが出てきて釣れるので朝から我先にとガツガツ行く必要はない。そういう人には先に行かせておけばいい。一般的な川では朝まづめだろうが、ここのイワナの捕食はテレストリアル(陸生昆虫)が中心なので、それに合わせてイワナも活動的になるのは8時を過ぎてくらいからで、それから午後1時くらいがベストタイム。しかも朝早く釣ってもチンピラ(小物のことらしい)ばかりで大物は出ないから...」と聞いてはいたのだが、そうは言っても初めて来たところで、こんな素晴らしい川を目の前にして優雅コーヒーでも飲んで8時を待っていることなんてとてもできやしない。

6時ちょっと過ぎに釣り始める。両俣小屋から上流側に行くか、昨日歩いた林道を下って小屋まで釣り上がるか迷ったが、釣り人の性として上流に入りたいという人の方が多いだろうと下流側に向かうことにした。今日は今から終日好きなだけ釣りをすることができる。まずは下流から攻めて、おそらく朝から入っただろう先行者がかなり上流に行った昼前頃に上流に入ろうということにした。

川沿いを歩き下るとどこもここもポイントばかり、しかもそこにもここにもイワナが見えていて一体どこから川に入るか中々決められなかったが、結局、林道が川沿いに合流するところから釣り上がることにした。天気も良く爽快だ。こんな日にこんな素晴らしい川で釣りができるなんて何て幸せなんだ。

川に立ち込むと水が身を切り裂くように冷たい。立ち入ったままでは2~3分しかいられないだろう。昨日と同じ#12の巨大なエルクヘアカディスを5Xのディペットに結び付けて期待に胸を膨らませながらファーストキャスト。ここの川は上流に向かって右側に林道があるので左利きの僕としてはキャストしやすくてありがたい。

すぐにイワナが跳び出してくるが巨大なエルクヘアカディスを前になかなか咥え込むことができずなかなかフッキングしない。それでもキャストすればするだけアタックがあり程なくして今日最初の1尾をキャッチした。25センチ程だろうか赤い朱点が美しいイワナだ。

それから小屋近くまで釣り上がり朝の釣りを10時前に終了するまでに10尾以上は釣りあげただろうか。確かに25センチくらいが最大でサイズは出なかったがたくさんのイワナと出会うとことができとても楽しい朝まづめだった。
2日目の朝、林道を15分ほど下ってきて林道が川沿いに合流する辺りから釣り始める。次第に両俣の谷に陽がさしてくるが日陰でウェーディングすると水が身を切り裂くほど冷たい。
テント泊をしていた人たちはほとんどが登山客だったのだろう。午前の釣りを終えてテント場に戻ると張られていたテントのほとんどが撤収してなくなっていた。そして、この日の夜は3連休の中日というのに10張ほどだった。何と優雅なテント場なのだろう。
一般的な山小屋では考えられないことだが両俣小屋にはゴミ置き場が用意されており、生ごみ・プラスチック・ビニール類、アルミ、スチール、ガラス・ビン、それに何とガスカートリッジまで捨てることができる。両俣小屋まで許可車両は入ってくることができるので、それが理由かも知れないが本当に驚いた。しかしながら山に登る人間としてはできる限り持ち帰ることができるものは持ち帰るようにしたい。

両俣小屋にはまた必ず来る。だったら右俣沢も左俣沢も念のために見ておこう。

テント場に戻って朝食を食べる。ついでに2日目用に昨日の宴会でも飲まずにいたビールを一本空ける。世間の目を気にすることなく飲むビールというのは何と美味いことか。山に行くと時々自分はアル中ではないかと思ってしまう。まぁ別に生活に支障をきたしている訳ではないし、いわゆる「酒飲み」とアル中の境界も曖昧なので自分は「酒飲み」ということにしている。

陽が高くなり両俣の谷にも強い太陽に光が差し込んでくるようになるとテント場周辺の木々の葉がキラキラと緑色に輝く。清々しい初夏の光景だが、今年は梅雨が6月中にあっという間に終わって以降、異常に暑い日が続き下界の甲府ではおそらく今日も38℃とかになるのだろう。ここ両俣小屋でも今年は例年よりかなり気温が高いようだ。

小屋に立ち寄って小屋番Mさんにこれから上流側に行こうと思うのだが左俣沢と右俣沢のどちらがいいか尋ねる。少し考えた後に右俣の方がいいかなというのでまずは右俣沢に入ってみることにする。野呂川乗越への登山道を行き左俣沢と右俣沢が分岐するところから釣り始める。ほどよい瀬と落ち込みが連続するとても好みの渓相だ。午前中にすでに数は満足するだけ釣ったのでここでは大物を狙ってちょっと水深があるポイントをメインに攻める。

本当にここはどれだけ魚影が濃いのか?と問いたくなるほどイワナが次々と出てくる。そして小屋番Mさんが言っていた通り早朝よりも魚のサイズが一回り大きい。どの魚体もがっしりしていて引きが強く掛かった時には「これはちょっといいサイズか?」と思わせるのだか上がってくるとどれも27~28センチくらいで、結局、尺に届くイワナをついにはキャッチすることはできなかった。

数を狙っている訳ではないのだがこれだけどんどん魚が掛かると時間ばかり過ぎてなかなか右俣沢の遡行が進まない。結局どれくらいだろう400メートルは釣り上がっただろうか?また次に来るときのために左俣沢も念のために見ておこうと引き返すことにした。

左俣沢は右俣沢との分岐では右俣沢に比べてとても細い流れのようだったが遡行するとかなり広く開けるところもあり、またさらに先に進むと連続した落ち込みが続き右俣沢によりポイントのバラエティに富んでいるように感じた。もちろん、どちらの沢も大して奥まで踏み入った訳ではないので所感でしかないのだが、左利きの僕にとっては右俣沢の方が上流に向かって右岸側からキャストできるところが多く断然釣りやすい印象だった。そして、これは時間のせいもあったのかも知れないのだが左俣沢の方が全体的にイワナが小ぶりだったように思った。

とは言えたった一回の釣行で入り口をちょこっとかじった程度なので全く何の参考にもならないのだが、次に両俣小屋に来た時には右俣沢を朝からじっくり上流の方まで攻めてみたいと思った。
野呂川沿いにある野呂川乗越への登山道を左俣沢・右俣沢の分岐付近まで歩いていき入川する。今にも熊が出て来そうな雰囲気でコーナーで登山客がいきなり現れたときにはちょっとビクッとした。
左俣沢・右俣沢分岐から100メートルほど遡行した辺りの右俣沢の渓相。ちょっと水深があるところではだいたい大きめのイワナがフィーディングしていた。
まぎれもない大和イワナ。朱点が本当にきれいだ。ボディに対するこの尾びれの大きさ。力強い引きのはずだ。サイズ的には尺を越えることはできなかったが魚とのやり取りには十分に満足した。
自分なりになかなかよく撮れた一枚。小屋番Mさんに聞いたところ両俣小屋では今年も「いわな美人コンテスト」という両俣小屋周辺で釣ったイワナだけに限った写真コンテストをする予定ということだった。この一枚は今のところその候補にしておこう。
左俣沢を少し入ると開けた瀬が連続する。川の上にボサも覆いかぶさってなく心置きなくラインを出してロングキャストして遠くのポイントを攻めることができる。細く小さな渓をテンカラのようにポイントポイントを叩き上がるような釣り方も好きだが、ラインを思いっきり出すとあーフライフィッシングしてるなと感じる。
左俣沢をさらに上流に進むと今度は落ち込みが連続する渓相が現れる。釣りを終了する時間が迫ったので全く奥までは行けてないが左俣沢は右俣沢より渓相がバラエティに富んでいるように思った。
左俣沢でキャッチしたイワナ。今日一日でいったい何尾くらいのイワナをキャッチしただろうか?15尾くらいまでは数えたのだが...

Day3 : 7月16日(月)

後ろ髪を引かれながら帰路につく。満足したが2泊3日じゃとても足りない!

昨夜もまた楽しい釣りバカの宴だった。今日は帰る日だ。3連休の最終日なので下山する登山客も多いだろうから混雑を避けるためなるべく早くの朝のバス便で帰ることにする。それでも普通ならそのちょっとの間だけでも釣り糸を垂れようと思うのが釣り人の性なのだが、何ということかこの釣りバカの自分が今朝はそんな気持ちにならなかった。

テントを撤収して小屋に伺って小屋番Mさんに「また今シーズン中に来ます!」と挨拶する。川沿いの林道からは今日も朝から元気にフィーディングしているイワナたちがたくさん見えていた。取り立てて大物はいないものかと探しながら歩いたが、そこまでのサイズのイワナは見つけることができなかった。

下り基調の林道は行きに比べてずいぶん楽に感じるが今日も陽ざしが強烈で日向を歩いているととても暑い。時折吹き抜ける爽やかな風だけが救いだ。

昨日の釣りのことをぼやっと思い出しながら歩く。初めて来たここ憧れの渓流釣りのメッカ 両俣小屋での釣りを十分過ぎるほど満足したが、やっぱりもっと大物を釣り上げたいし、いずれは右俣沢はもちろん左俣沢も行けるところまで遡行して渓相を見てみたい。今回は2泊3日の釣行だったが正直、3日じゃとても足りない。できるなら1週間くらい留まって心ゆくまでこの周辺を釣り回ってみたい。

今年は梅雨明けが早かったので7月のこの時期ですでにこんなに楽しい釣りができるが、梅雨明けが7月後半だったりするとここで釣りを楽しめるのは9月中旬の禁漁まで正味一ヶ月半ほどしかないことになる。

まだまだ夏に歩きたいアルプスの山々もたくさんある...どう山と釣りの配分をマネジメントするか迷うところだ。
行きは後ろ側になり気づかなかったが林道の真正面に仙丈ケ岳が見える。どのあたりだろうか?大仙丈ケ岳から仙丈ケ岳までの尾根かな。
よく見かける感じにカーブミラーに映った自分自身を撮影してみる(笑)
長い長い林道歩きの末にやっと野呂川出合が見えてきた。野呂川出合9時55分の広河原行きのバスに乗るために両俣小屋を6時45分に出発。コースタイムで2時間20分掛かるのでバスに間に合わないかも知れない!と急いで歩いて戻ってきたのだが野呂川出合に到着したら8時40分だった。えっ???どういうこと?どうやら時間の計算を1時間勘違いしていたようだった。それにしてもどうしてここまで来るまで全く気づかないのか...もっとゆっくり歩いてくればよかった。
広河原でバスを待っている時間に吊り橋の上からの野呂川を覗き込む。先週に降った雨でこの辺りはまだまだ水量が多かった。この辺りになるとかなり川幅も広く深さもかなりあるので、ここまで水量が多いと正直、毛鉤釣りにはかなり厳しいだろう。フライフィッシングをしていた年配の男性が一生懸命おそらく妻だろう女性にテンカラ釣りを教えていた。まだまだ魚が掛かるまでには時間がかかりそうな感じだった。両俣小屋まで行った方がもっと釣れる可能性ありますよ。
その時は全く気付かなかったが両足のひざから下をたくさんブヨに刺されていた。夜、釣り談議している時、ローソックス履いていたからその間にやられてしまったのだろう。たったこの範囲だけで20か所以上…家に帰って翌日どうしようもないほど痒くなって大変だった。

データ

  • 入山日: 2018年7月14日(土)
  • 下山日: 2018年7月16日(月)
  • 登山エリア: 南アルプス
  • 登山ジャンル: その他
  • 登山スタイル: テント泊
  • メンバー: ソロ
  • 天候: 3日間とも快晴。気温が高く標高2000メートルの両俣小屋周辺でも25℃を越えた。
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