2018年1月29日(月)19:01

黒百合ヒュッテでテント泊、八ヶ岳を天狗岳から硫黄岳まで厳冬期縦走 HOT

年末に風邪を引いてしまってから咳だけがなかなか抜けきらず、ひと月ほど山に行くことができなかったので、今回が2018年登り始めの登山だ。行先は、八ヶ岳。どこに登るか迷ったが、ここ2回連続して赤岳鉱泉に行っていたので、少し違うところに行きたいと思い黒百合ヒュッテにテント泊して、天狗岳に登ることにした。

 

12月、冬山でのテント泊を初めて体験して、持っていた60リットルのザック GREGORY トリコニでは、これからいくつか増える雪山装備を思うと、とても容量が足りないと感じセールになっていたGREGORY バルトロ 75リットルザックを手に入れてから初めての山行だ。やはり新しい道具を手に入れて初めて使う時はワクワクする。さらに今回は、モンベルで買ったショベルも初同行。さらに、これからやりたい雪山縦走を考えると次はスノーシューもしくはワカンは絶対必要だし、冬山ギアがどんどん増えてくる。

 

まだまだ、2回目の雪山テント泊の未熟者だが、始めて何かものすごく解放された感がある。今までは雪が消える5月くらいから11月くらいまでがテント泊のシーズンで、その間に行っておかないとという、ちょっとした焦りというか急くような気持があったのだが、雪山テント泊をやり始めて、年中テント泊ができると思うととても余裕のある気持ちになる。

さらにほとんどの営業小屋が閉まった冬季のテント泊では、どこでテントを張るかは基本的に自由だ。もちろん安全には大いに気を付けないといけないが、やろうと思えば自分が好きな景色の場所に寝泊りできる解放感と自由さがある。

夏とは桁違いに厳しい自然条件を差し引いても、人も多く何かとルールの多い夏のテント泊よりもよっぽど魅力的かも知れない。なぜアウトドアをしているのかと言えば、誰にも指図されない自由さを求めている訳だから。とは言え、まだまだ、それを、どこででも自信を持って実行できる技術も勇気もまだない。一歩一歩、経験を積み重ねていくしかない。

 

茅野駅の黒百合ヒュッテに向かうバスは臨時便が出るほど大勢の人で賑わっていた。今週、久しぶりに八ヶ岳にまとまった積雪があった。みんな雪を待ってたようだ。

今日は、黒百合ヒュッテまで、たった2時間ちょっとの行程だったが、結構、足にきた。黒百合ヒュッテは、すでに10張りほどのテントで埋まっていた。真新しいショベルでテントサイトの整地、風対策として30~40センチほど掘り下げる。サラサラの雪で持ってきた竹ペグでガイラインを雪の中に固定するのに苦労する。

テントを張り終わってテント泊の受付をするとテント泊の人は飲料水は雪から作ってくれと言われる。先月テント泊した赤岳鉱泉ではふんだんに水を貰えたし、夏シーズンの黒百合ヒュッテではいつも飲料水を貰えていたので油断していた。テントサイト横の雪の表層を掻き分けて内側のきれいな雪をとって水に戻す。低温でガスの威力も弱く、結構、時間のかかる作業だ。30分ほどでやっと1.5リットルの水を作ったが、持ってきた110グラムのガスの70%以上は消費した。

 

夜中、気温はだいたいマイナス11℃前後で推移、朝方、少し寒さを感じたが十分に睡眠は取れた。

 

翌朝、まだ暗い5時くらいからガサガサと周りのテントで今日の行程の準備をする音が聞こえる。寒いし暗いし...とても、厳冬期のこの時間に暖かいシュラフから抜け出す勇気がない。辺りが明るくなり始めた7時前、やっと決心してシュラフから抜け出した。

 

快晴。風もそれほど強くはなさそうだ。天気があまり良くなかったらここにテントを張りっ放しにして気軽に天狗岳をピストンするつもりでいたが、この快晴、天狗岳から硫黄岳まで縦走することにした。急いで全ての荷物をパッキングして、8時半過ぎに歩きだす。

予定より30分ほど遅いが仕方がない。それでもやっぱり75リットルのザックにしてパッキングが相当に楽になった。取りあえず、ある程度、雑に投げ込んでもそれなりに入っていく。こういう厳冬期や、夏でも雨の日のパッキングを思うとある程度、余裕のあるザックを持っている方が使いまわしがいい。

 

天狗岳、根石岳を越え、硫黄岳に向かう。箕冠山から夏沢峠間はあまり多く歩かれておらず踏み抜きに苦労した。

 

20キロ近い大荷物を持っての積雪期の縦走に、正直、初めてピッケルの必要性を強く感じたように思う。今までは、例えば、数年前に厳冬期の赤岳に登った時でさえも、どことなく、それほどピッケルが必要だったのかなという気持ちがあった。

これらの山を登るにあたって体裁も含めて持たない訳には行かないが、ピッケルがなくても普通に登れるんじゃないかなという感覚だった。もちろん、滑落停止では絶対必要なのは分かってはいるが、その他を思えば、果たしてどれくらい使えるものなのか、自分の中できちんと整理できない部分があった。

しかし、今回、重い荷物を持ってでの雪山縦走で初めてピッケルの必要性をちゃんと認識できたように思う。重い荷物を持ってでの確実な一歩一歩の踏み出しには3つ目の支点としてピッケルは欠かせないと思った。とてもストックでは役不足だし、強力な素材でできているピッケルを持っていることで安心感があった。

こうやって「格好」とかではなく、本来の意味として、その道具の本質を理解できた時、とても嬉しいし、成長出来ているんだなと感じる。

 

硫黄岳から少し下りて赤岩ノ頭を眺めると12月に来た時に比べてずいぶんと雪が増えていた。また登山ルートも斜面を直登する冬ルートに代わっていた。恐らく前の週の積雪でルートが消えて、その後、最初に歩いた人が付けただろう登り返しが何度も訪れる酷いトレースの雪道を下って赤岳鉱泉に下りる。今日は最後まで快晴の穏やかな一日だった。ビールを一杯飲んでバス停のある八ヶ岳山荘まで下った。雪山でテント泊、縦走と、ちょっと自信が持てる今回の山行だった。

ルートマップ

ルートデータ

入山日
2018/1/20
下山日
2018/1/21
距離
16.4km
最高点
2760m

トレッキングレポート

1日目 : 渋ノ湯~黒百合ヒュッテ

朝一番のあずさで茅野駅に到着して、渋ノ湯行きのバス停に向かうと、その人の多さに驚いた。乗客はバス1台には収容できず2台目のバスが用意されることになった。今シーズン、降るのは早かったけど、ずっと雪が少なかった八ヶ岳、今週初めの雪で、皆、待ってましたとばかりにやってきたようだ。
空が近づいてきて、あと少しで黒百合ヒュッテだろうというところから、なかなか到着しない。「あれっ。まだ、こんなあったっけ?」と。渋の湯登山口からたった2時間ほどの行程だけど、今日は足が重かった。
雪山装備として新しく手に入れたモンベルのショベルでテントサイトを掘り下げて整地、テントを張った。

まだ、雪がそこまで多くなかった先月の赤岳鉱泉でのテント泊では、足で雪を踏み固めて整地できたが、これくらいの雪になるとショベルはなくてはならない装備だと思った。
黒百合ヒュッテでテント泊の受付をすると、まさかの「テント泊の方は、雪から水を作ってください。」

メジャーな黒百合ヒュッテなんで水はもらえるものだと油断してた。でもそれホームページのトップページとかのもっと目につくところに書いといてくれればいいのにー。

一生懸命、雪から水を1.5リットル作る。持ってきたのが小さいガスで量がギリギリだったけど、何とかもった。
気温はマイナス10℃近いけど、雪割りウィスキー。冷たいので寒いような、ウィスキーなので温まるような…ただ、持ってきた500mlのウィスキーはきちんと飲み干した。
陽が沈むとどんどん気温が下がってくる。テント内で煮炊きしたのでフライシートが凍っている。そこを暖かい指でなぞると一瞬、解けるがまたすぐ凍る。寒いのでシュラフに入る。まだまだ5時半過ぎ。朝までとてつもなく長い…

2日目 : 黒百合ヒュッテ~天狗岳~硫黄岳~美濃戸口

夜中過ぎから朝までだいたいマイナス11℃前後の気温だった。ぬくぬくのシュラフからなかなか抜け出せず、結局、スタートが8時半過ぎになってしまった。

天気があまりにもいいので、今日は天狗岳、根石岳、硫黄岳と縦走することにする。濡れたシュラフ、テントの分だけ、昨日よりだいぶザックが重い。慎重に行こう。
中山峠からちょっと登ると稜線に出る。よく見る東西天狗岳の風景。風はあるが暴風というほどでははない。それにしても空は本当に雲ひとつない快晴だ。
結構な斜度の登り。日帰り装備だったら何の問題もなくスイスイ登れる箇所もテント泊装備一式を背負ってになると全く難度が増す。ザックの重さで過って後方にバランスを崩さないように慎重に歩を進める。

ピッケルをちゃんと雪に差し込んで一歩一歩のステップがこんなにも重要だということが初めて意識できた。
なだらかな傾斜を登って天狗岳山頂まであとわずか。山頂はいつもながら多くの人で賑わっていた。
2640m、東天狗岳山頂に到着。
真白な西天狗岳。黒百合ヒュッテを出発するほとんどの登山者は、東西天狗岳を歩いて再び黒百合ヒュッテに戻るか、周遊コースで唐沢鉱泉へと下っていく。今回は西天狗岳には足を運ばなかった。
東天狗岳山頂から根石岳へ下るすぐのところが2メートルほど両端が切れ落ちたリッジになっていてバランスを崩さないように慎重に通る。これも軽身なら何て言うことない場所なのだが、荷が重いとレベルが上がる。

ひとしきり下りた根石岳との間のコルは、僕が八ヶ岳の風景の中で一番好きなところだ。ここから見る東西天狗岳のなだらかな稜線の優美な曲線の稜線がとても好き。
根石岳山頂へ登り返す。黒百合ヒュッテから天狗岳への雪山メジャールートに比べてとても人が少ない。こういう静かな山歩きはやっぱり縦走しないと味わえない。
2603m、根石岳山頂に到着。
根石岳から下りるとすぐにある根石岳山荘。ここのホームページを見ていたら、数年前から1月から3月まで冬季営業していることを知った。しかも、数年前に新館ができて水洗トイレも備わっているということ。

根石岳から向かいにある箕冠山は樹林に覆われており、そこから吹きさらしの稜線を水平に5分程歩けば行けるので、厳冬期八ヶ岳の稜線をお手軽に体験できる山小屋として人気があるそうだ。

ただただここで温く温くと仲間と酒を飲むためだけでも来てみたいなと思っていたのだが、さっそく来る3月に、昨年、北アルプスで知り合った仲間とここに来ることになった。とても楽しみだ。
樹林帯に入り箕冠山から夏沢峠に向かうが、数日前に降った雪以降、あまり多くの人に歩かれてないようで、トレースの雪が締まっておらず、いたるところで踏み抜いた。思い荷物で踏み抜くと、足を引っ張り出すのが大変だ。何度も足がつりそうになった。
夏沢鉱泉からの硫黄岳への登り、北斜面ルートは、山頂と同じくほとんど雪がなかった。風の山 硫黄岳では常に北寄りの強風が吹いていて雪が付かないのだろう。案の定、この日も次第に風が強くなってきて、登っている後ろから吹く北風にあおられて何度かバランスを崩しそうになった。また、足元がむき出しの岩なのでクランポンの爪を引っ掛けてつまずかないように気を付けた。
先月に続いて硫黄岳登頂。相変わらず雪はほとんどない。写真を見るだけだと無風、快晴、暖かそうに見えるが、実際は気温マイナス10℃ほどで10メートルほどの風に吹き曝しになっている。写真じゃ伝わらない。
お決まりの硫黄岳山頂から眺める八ヶ岳の雄たち。
天狗岳、根石岳、箕冠山と、今日、歩いてきたルートを振り返る。やっぱり規模は小さくても縦走には踏破した満足感がある。
赤岩ノ頭は、先月来た時よりもさらに一層、白くなっている。さあ、あとは赤岳鉱泉に向けて下るだけだ。
赤岩ノ頭の南斜面。まだまだ、雪庇ができるほどの積雪量ではないよう。
それでも赤岩ノ頭からの下りは、樹林帯もほとんど埋まって直登の雪道ルートになっていた。

ただ、誰が最初にこのトレースを付けたか、ルートは夏道を全くと言っていいほど無視したとても歩きにくいルートだった。通常の夏道だと登り返しはないのだが、ずっと真っすぐ下っていった挙句、狭く通りにくい木々の間を登り返すようなルートになっていた。

これなら、ちゃんと赤岩ノ頭直下までは夏道でそこから直登するいつものルートの方がよっぽど効率的だと思う。
赤岳鉱泉まで下りると風も全くなく、強い日差しのせいもありとても暖かかった。小屋でお疲れビールを買って飲む。アイスキャンディには相変わらず多くのアイスクライマーが取り付いていた。ちょうど、初心者の講習会が行われているようだったが、アイスクライミング、とても人気あるみたいだ。

面白そうだとは思うけど、必ずペアじゃないとできないし、あの「ガンバ!ガンバッ!」って登ってる人へ声を掛けるような何だか体育会系的なノリがちょっとと言うかかなり苦手で馴染めない(笑)

やっぱりどうやらひとりで静かに山を歩くしかなさそうだ。
美濃戸口までの林道は、先日、標高が低いところで降った雨が凍ってアイスバーンのようになっている個所がいたるところにあった。凍結は、美濃戸口手前の林道の登りまであったので、最後までスパイクを付けて歩いた方が楽なように思えた。

データ

  • 入山日: 2018年1月20日(土)
  • 下山日: 2018年1月21日(日)
  • 登山エリア: 八ヶ岳周辺
  • 登山ジャンル: 縦走登山
  • 登山スタイル: テント泊
  • メンバー: ソロ
3355