週末はすこぶる天気が良さそうだったので、始発電車に乗って八ヶ岳に向かう。多少、不便なところはあるが、帰りの高速渋滞と襲ってくる睡魔の事を思うとよっぽど公共交通機関を使う方が気楽だ。ついでに車内で酒さえも飲める。
小淵沢駅で下車。ホントは隣の信濃境駅で降り登山口まで1時間半歩くつもりでいたが、あえなく小淵沢からタクってしまった。相変わらず意志が弱い。
標高1400mあたりの富士見高原登山口付近はまさに今見頃の黄葉・紅葉が真っ盛り。まず西岳を目指す。しばらくは緩やかな登りが続き、美しい木々を堪能しながら歩くが延命水という湧き水を過ぎたあたりから次第に高度を上げる。
ずっとずっと登りが続く。普通はたいがい少し平らなところがあり一息入れるところがあるのだが、このルートは全くそれを許してくれない。
山頂直下あたりで一旦森林限界を抜け、さらに10分程登ると西岳山頂。素晴らしい。西に開けた山頂からは、つい3週間前に登った甲斐駒ヶ岳を含め南アルプスが一望。ひときわ高い北岳山頂だけ白く雪がついている。
山頂で担ぎ上げたビールを飲む。ここからはほぼ水平な道を今日のテント場 青年小屋まで1時間弱なのでゆっくり過ごす。風がなく陽ざしがとても暖かい。
青年小屋はもう4度目。そのうち二度は嵐のような天気に見舞われたが、今回はたぶん大丈夫だろう。
青年小屋から30分ほどで登れる編笠山で南アルプスに落ちる夕日を眺めようと思っていたが、西岳でちょっとゆっくりし過ぎ、登るには少し暗くなってしまったのでやめる。ここに来るといつもそうしたいと思っているのだが一向に達成できてない。
小屋のテラスで夕食を食べ、持ってきた赤ワインを飲み6時前にテントに入る。夕日で赤く染まる山を見ながら酒を飲むのは気分がいい。ソロ登山は、おじさん・おばんさん気兼ねなく色んな人と話が出来て楽しい。自分もそのおじさんにすでに入っているのだがね。
6時前にテントに入る。小屋は今シーズンの最後の営業でイベントでもしていたのだろうか。夜遅くまでじゃんけん大会の声が響いていた。
翌朝5時起床。思いのほか暖かくよく眠れた。準備をして6時過ぎに発つ。今日は権現岳まで1時間半登りあとは天女山に下るだけの気楽なスケジュール。
昨日ほど快晴じゃないけど今日も天気がよく、南も中央も北アルプスも富士山もよく見えている。途中、ギボシの頂を踏み権現岳の肩で朝ご飯を食べる。稜線の東側は陽が当たり風裏で暖かい。昨夜、少し飲み残したワインを飲み荷を軽くする。ただ腹に入っただけで総重量は変わらないのだが…
権現岳の肩から眺める八ヶ岳はアルペン的雰囲気満載でカッコいい。またここから赤岳までのキレットの稜線を歩きたい。
下山開始。権現岳直下からちょっとしたクサリ場がいくつか続き、三ツ頭を過ぎ、ザレた下り道が続くところに数人立ち止っていた。休憩してるのかと思い通りかけると、ひざ下を木で応急的に固定した男性が登山道に横たわっていた。骨折してヘリを呼んでいるとのことだった。
あんな岩場をずっと無事に降りてきて、こんな普通の登山道で骨折するなんて…よく聞く話だけど本当にそうなんだ。
無事、天女山の駐車場に下山。同じ頃下山してきた愛想のいいおじさん(松尾さんという)と山の事をあれこれ話していると、おじさんも神奈川から来たとのことで最寄りの駅まで車で送ってくれるとのこと。ありがたい。これで行きにタクった分を取り戻すことができるどころか、さらにお釣りすら出る。たった5000円弱で八ヶ岳登山を楽しめたなんてー。
車中、話好きな松尾さんと山の話から、70歳の松尾さんが人生でやってきた様々な仕事のことなど、話が弾んだ。しかし一番驚いたのは、松尾さんが大分の日田出身で日田林工卒だったこと。
愛恋だったらそんな偶然話は「ドラマだけドラマだけ」って思うだけだけど、こういうのがあると必然だったのだろうかと思ってもしまう。
そういえば、数年前も雪の鳳凰山で数人しか出会わなかった中で津久見出身の人に会ったし、自分の苗字のルーツをたどって緒方に行ったという人も…
あまりの偶然に松尾さんの連絡先を伺おうかなと思ったが、こういうのはやっぱ「一期一会」だから良いんだろうなと思い「また、どこかの山で!」と挨拶して別れた。
松尾さん、送っていただき本当にありがとうございました。「またどこかの山でー!」