2018年7月17日(火)18:26

花を堪能しゆるく楽に楽しくの山登りのはずが思わぬアブの襲撃に合う

2018年7月1~2日に八ヶ岳 編笠山・権現岳に登ったエッセイレポート。「楽なルートを快適に!」をモットーに計画した今回の山登りだったが登りが思った以上にきつく、さらに思わぬアブの襲撃に遭いちょっと大変な思いをした。花の咲く時期7月の山は虫対策がとても重要なことを今更ながら思い知った今回だった。いまだに残るアブの傷口を見ながらつくづく思う。

ルートマップ

ルートデータ

入山日
2018/7/1
下山日
2018/7/2
水平距離
10.2km
最高点
2715m

トレッキングレポート

ゆるゆる登山を求めて9回目の編笠山へ

南アルプスに行こうと思っていた週末だったのだが、そこまでガツガツと本格的に登る気にはなれず。とはいえ今年の夏もまた何となく計画している夏のアルプスの長期縦走を思うと山に登るための足は作っておかないといけない。じゃ近場の丹沢にでも登るかというとやはり、それはそれでこの暑い中、なかなか行く気にはなれない。

さてどうしよう?そうこう考えながら朝トレイで用を足しながらそこに常備している南アルプス、北アルプス、そして八ヶ岳の地図を眺めていると、ふとここ数年は冬に登る山になっていた編笠山が目に留まった。山頂に最も近い観音平から登れば3時間半程度の行程で登頂でき、そうきつくもなく丁度いい。また、そこから20分も下れば「遠い飲み屋」と称される青年小屋がありテント場もある。

ほどほど登ってテント泊できて酒も十分担ぎ上げることができる。いいじゃないか!ということで久しぶりに編笠山に登ることにした。何度も来ている印象だったので数えてみると、編笠山に登ってはなくとも、ここ青年小屋の脇を通り過ぎた回数はすでに8回を数えていた。とはいえ、ここ最近は冬にしか来ておらず夏のシーズンに来るのは実に2014年以来のようだった。

ゆるゆる登山だったのでひとりで登るのもちょっとつまらないような気がしたので長野に住んでいる山仲間に声を掛けてみると2人は日帰りでの参加ということだが何と3人とも来てくれると言う。楽しく山に登れそうだ。

ありがたいことに小淵沢で車にピックアップしてもらい自動車で観音平に向かうと富士見平の登山口あたりから駐車する車の車列が鈴なりになっていた。びっくりする車の数だ。早いもので今年はまだ7月初日というのに梅雨が明けてしまった。そして、この晴天。そりゃ混んでないはずがない。
観音平の駐車場。富士見平の登山口付近まで駐車した自動車の列が続いていた。

最近はいつもヘロヘロと言っているじゃないか

準備をして登り始める。前回の山がほぼ一か月前、地元九州に帰省していた時に登ったくじゅう。せっかく今年は4月から丹沢に登って、GWには表銀座を雪山装備で縦走して、そこそこ足ができていたのがほぼゼロ状態に戻ったようだ。1泊でそう重くはないはずの装備が重くて足が進まない。いつもながらに思う。山のためにいくらジョギングしても山登りの足しになることはそう多くはない。せいぜい息が切れないようにはなると思うのだが…

雲海で休憩、押手川で休憩。ポイントポイントで必ず休んで編笠山への直登ルートを登る。このルートは一度だけ登ったことがあるが結構きつかった記憶がある。そして、やはりその通り編笠山を遠くから眺めるなだらかな姿からは想像がつかないほどの急斜だ。その上、岩がゴロゴロして本当に歩きにくい。

ただリーダーとして歩いている僕に引き連れられた3人は足取りも軽く快調に登っているようだ。もはやリーダーは「リーダー」という建前とプライドだけで先頭を歩いているだけだ。

森林限界が近づいてくるにつれてあちこちにツマトリソウが現れる。

最近のブログを読み返してみると、近頃はしょっちゅう言っているように思えてくるのだがもう本当にヘロヘロになりながら山頂にたどりついた。雪のない季節の編笠山は久しぶりだ。3~4年ぶりに南側から眺める阿弥陀岳、赤岳、横岳の八ヶ岳のスターたちの雄姿もやっぱりいいもんだと思った。

もうそこまで飲みかけたビールが...

天気も良く涼しげな風が吹き抜ける涼やかな山頂で座り込んでザックにしたためたビールを取り出す。さてさて飲もうかとプルタブに指を掛けると「小屋に行って飲みませんか?」とKから声を掛けられる。どうやらKはビールを担ぎ上げて来なかったのでビールの売っている下の青年小屋まで降りてみんなで飲もうと言うことだった。

もうホントそこまでビールを要求している喉を寸でのところで抑え込む。いけない、これは全くいけない。せっかくストレスを発散するためにも山に来ているのに、これじゃストレスが溜まるばかりじゃないか!とは言えリーダーとしてぶつぶつ小言をいうことはできないので彼らの総意に素直に従うことにする。

樹林を抜け青年小屋が見える岩場まで来ると白い花がたくさん咲いていた。花のかたちからチングルマかと思ったが帰って調べてみると葉っぱが全く違う。どうやらシロバナノヘビイチゴのようだった。

青年小屋でやっとビールにありつきストレスから解放され、さらにいい気分にもなる。僕とTはここが今日のゴールだ。もうここでどれだけ酔っぱらおうとあとはテントまで這ってでも行けばいい。唯一違うテントにだけは間違って入らなければー。
湧き上がる雲の合間から見える富士山
みんなでビールを飲むために編笠山から青年小屋へと下る

やるならもっと上手くなってからやってくれっ!

夕食も食べ終わり夕闇迫るテント場でまったりと時間を過ごしていると編笠山から何やら大声で歌う声が聴こえてくる。そう言えばさっき青年小屋のデッキでビールを飲んでいる時にスマートフォンの音量を上げて音楽を聴いている30前後の男が居たのを思い出した。どうやらその彼が音楽を聴くだけではモノ足らず歌いだしたようだった。

叫ぶように歌うその歌声は、鳥のさえずりを聞きながら静かな時の流れを堪能している僕らにとってはもう騒音でしかなかったが「まぁ山に来て解放されて大声で歌いたくなったのだろう...」と寛容な心でいたのだが、2曲歌い3曲歌い...彼のリサイタルは一向に終わることなくそれから30分以上歌い続けた。まったくだ!大声で歌うならせめて人様に聞かせることができるくらいになってからやってくれっ!
前から一度やってみたかった山小屋でのそうめん。水の豊富な小屋だから挑戦してみたが正直、失敗だった。そうめんを湯がいた残り汁が大量に発生して処理に困った。1泊2日くらいなら素直に流水麺を持って行った方が良かった。
夕闇迫る青年小屋
南にスカイラインに浮かび上がる富士山
北には北アルプスの向こうに沈む夕陽

権現小屋のイケメンな!?小屋番

ゆっくりと朝7時前にテントから出る。太陽はすでに高くまで上がって煌々とテント場を照らしていた。予定では権現岳に登るつもりでいたのだが、もうこのままここでいつものようにビールでも飲んでまったり時間を過ごして下山しても構わないような気もしたが、Tと相談してやっぱり行ってみようということになる。

標高2400メートルというのにすでに暑い。僕は半袖にショートパンツでいつも必ず履いているゲーターもつけずに出発する。

青年小屋から登って行くと昨日、編笠山に登った時とはかなり違った植生が現れてくる。ノロシバを過ぎるとイワベンケイ、ミヤマオダマキ、タカネシオガマにイワギキョウなど岩稜帯に咲く花が盛期を迎えているようだった。久しぶりに通る権現岳へのルートは記憶しているよりはるかに険しい感じだった。Tをサポートしながら慎重に岩稜帯を通り過ぎなだらかな稜線の道を進むと程なく権現岳の山頂につく。

ピークの肩にある権現小屋に立ち寄りビールを買おうと小屋のドアを開けて中に入ると客はおらず人の気配が全くしない。ただその先にある客室にポツンとコタツがありそのコタツのテーブルの上にはスプーンが乗った食べ終わったカレーライスの皿が残っているだけだった。誰も居ないと思ったが外には営業中とあったので「すいません」と声を掛けてみる。反応がない。もう一度少し大きな声で声を掛けると、そのポツンとあったコタツの向こうからにょきっと腹筋運動でもするかのような角度で人が起き上がってきた。起き立てのぼさぼさの頭をしたその青年は「あっすいません。寝てました。何でしょうか?」慌てたように言った。あまりに可笑しかったので笑いながらビールほしいんですけどと言うと、そこにクーラーボックスがあるのでそこからビールを取ってそこにある箱にお金を入れてくださいと。何だか気持ちよく寝ているのを起こして僕も申し訳ない感じがしたので「あっ起こしてごめんね」とひとことだけ言ってビールを持って小屋から出た。

南アルプスを一望できる権現小屋の景色を見ながら朝から飲むビールは最高の気分だった。30分ほどして缶を戻すために再び小屋に入るとその青年の姿はやはりどこにもなかった。ただかすかに聞こえてくる寝息の音が彼がまたそこにあるコタツの向こうにちゃんといることを語っているのが分かった。

そう言えば去年見たNHKの番組で小説家を目指しているイケメンの小屋番が権現小屋にいて年配の女性の間で人気というのをふと思い出した。はたしてコタツの向こうからにょきっと起き上がったぼさぼさ頭の青年がそのイケメンだったのだろうか...
広々として気持ちのいい青年小屋のテント場
ノロシバを過ぎると雄大な景色が現れる。ここから先たくさんの高山植物が盛りを迎えていた。
権現岳山頂付近から眺める南八ヶ岳の峰々
権現小屋前のベンチは南アルプスを眺めるのに最高のロケーションだ。

半袖短パンスタイルは虫たちの格好の餌食だった

権現小屋を後にする。気温が上がってきたのか登る時にはそこまで煩わしくなかったアブがまとわりついてくる。半袖に短パンスタイルで今日に限ってゲーターもつけてない僕は格好の餌食のようだった。

1分歩いて一度どこかに食いついたアブを追っ払うために体のあちこちをたたきながら下っていくが、その数は、このエリアを過ぎると少なくなるだろうという淡い期待を裏切るように下るに連れてどんどん増えてった。そして青年小屋に向けての樹林帯に入ると僕の周りにはうっすらと影ができるくらいにアブがたかっているようだった。いやそれは言い過ぎだが、それくらいたくさんのアブが僕の周りにまとわりついていた。後ろから歩くTが冗談で「コーイチローさん大人気ですね。大勢のファンがコーイチローさんの追っかけですね!」と面白がりながらいうが、当の本人は煩わしいやら噛まれて痛いやらでそれどころじゃなかった。

写真など1枚も撮る余裕などなしに青年小屋まで掛け下るように降りる。

7月の山登りの反省。虫対策がとっても重要

青年小屋に戻って風通しのいいテント場に戻るとやっとアブの襲撃から解放されて一安心した。刺された当初はどうにもなかったのだが、それから2~3日たつと刺された箇所が赤くまだらになりとても痒くなった。刺された箇所を数えてみるとその数は優に50箇所を越えていた。(※このブログを書いている今2週間経っているがまだまだ痒いぞ!)

今更ながら花の咲く時期7月の山は虫対策がとっても重要なことを思い知った今回だった。いまだに残るアブの傷口を見ながらつくづくそう思った。

データ

  • 入山日: 2018年7月01日(日)
  • 下山日: 2018年7月02日(月)
  • 登山エリア: 八ヶ岳周辺
  • 登山ジャンル: 縦走登山
  • 登山スタイル: テント泊
  • メンバー: 3人以上
  • 天候: 1日目:曇りのち晴れ 2日目:快晴
  • メモ: アブが大量に発生。虫除け対策が必要だった。
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