実に山来るのは9月頭の北アルプス縦走以来だ。5日間の縦走だったが岩続きの岩稜がかなりハードだったからか、いや、やり切った感からか、期待したほど紅葉がよくないという情報をよく聞いたからか、いずれにしてもずいぶんと久しぶりの山行だった。
山に来ない間、釣りにはよく行った。本当は9月に禁漁間近の両俣小屋に行ってイワナ釣りを楽しみたかったのだが、天気が悪く結局行けず、それはそれでとても残念だったのだが、秋と言えばハゼ、自転車で行ける相模川河口で爆釣が続き、週末週末ごとすっかりハゼ釣りに興じてしまっていた。
一度、期間が空くと山に行くのも何だか億劫に感じて、しかも次第に日も短く、寒くもなってくる...山に行くモティベーションがイマイチ上がらずにいた。
今回の山行は、昨年から始めた山で出会った仲間(と言っても3人だけなんだが...)とシーズンが一段落ついた山で飲もうという企画のゆるゆる山行。最初は奥秩父の将監小屋を予定していたんだけど、何だかとても八ヶ岳に行きたくなり、僕のわがままをお願いして天狗岳に変更してもらった。
僕が山登りを始めたきっかけは、友だちから誘われた八ヶ岳の天狗岳。それ以降、天狗岳は好きで何度も登ったが、唐沢鉱泉登山口から登るのはその時以来だ。あれが2010年8月。6年経ってずいぶんと経験を積んできた気はするが山歴で言えばまだたった6年程度か。
11月も中旬にもなれば少し登れば登山道に雪が現れ始める。11月も中旬になればそりゃそうだと思いながら、アイゼンを装着するには中途半端なので、そのまま歩くがつるつる滑って歩きにくい。久しぶりにきた針葉樹の森のきんとした冷たい空気が気持ちいい。
黒百合ヒュッテでテント泊に受付をする。ネットの記録で何度か見かけたので200円の休憩料を払えば、夜、自炊場で晩ご飯を食べても構わないかと聞くが軽食が午後4時で終了するのでそれ以降はダメだと言われる。こういう事は、山小屋のウェブサイト上にはっきりと記載しておいてほしいものだ。いやもしかしたら、正直に聞かずに素泊まりの人たちにまぎれて飲んでいれば、まず気づかれやしないし、気づいてもそうそう注意されることもないのだろう。山小屋のスタッフだって素泊まりの人のことを考えると聞かれれば「ノー」と言わざるをえないだろう。こういうことを律儀に聞いてしまうことが本当にバカ正直で時々自分が嫌になってしまう。
テント場で飲み始める。幸い風もなく担ぎ上げた大量の酒で体も温まり、最後は3人用のテントに入って夜10時過ぎまで楽しく話した。ただ何を話したかは覚えてないが。
持ってきたウィスキー700ミリリットルを飲み干したにも関わらず、翌朝は快調に目覚めた。今日も快晴の天気。しかも、そこまで寒くもない。急ぐ山行でもないのでゆっくり出発の支度をする。
森林限界を抜けると雲ひとつない青空に少し雪をまとった天狗岳の双耳峰がどんと現れる。振り返れは北八ヶ岳の穏やかな山容が蓼科山までのびている。この景色が好きだ。やはり初めて経験した事の感動は脳裏に深く刻み込まれるからだろう。
東天狗岳山頂は5人ほどの若い男女のグループがいて賑やかにしていた。
東天狗岳から風が避けられる西天狗岳に移動して山頂で長い休憩を取って、天狗岳西尾根を通って唐沢鉱泉へ下る。西天狗岳からの下りは、ごつごつした岩の急傾斜で、その岩と岩の間に積もった雪が氷化してつるつるに滑り慎重に下った。氷と雪だけならアイゼンを使用するのが一番なのだが、そこに岩が混じると、アイゼンを装着すると今度は岩の上が歩きにくい。こういう場合にはチェーンスパイクが一番使えるのだろう。アイゼンより軽量化も出来そうにも思える。冬山のアプローチ用に今年は購入を検討してみようか。
ゆる山行、行程も短いのだが気合が入ってない下りはなんだかとても疲れる。下りでは仲間たちも次第に口数が減り静かに下っていく。大した距離ではないはずだがなぜかとてつもなく長く感じ、登山口の建物が見えてきた時はほっとした。
前回来たときには入らなかった唐沢鉱泉で立ち寄り湯をする。さすが日本秘湯の会の温泉だけあって、泉質はもちろん、ちょっとひなびた、温泉旅情を感じさせる旅館の雰囲気が良かった。
久しぶりの山で天狗岳に仲間たちと来れて、やっぱり山は楽しいなと再認識できる山行になって良かった。またぼちぼち登り始めるか。そして冬山に向けてまた少しずつトレーニングを始めないと。