2011年12月10日(土)09:00

積雪の丹沢 主脈縦走

朝5時、いつもとは逆、東京行きの電車に乗り藤沢駅で小田急に乗り換える。そして、さらに町田で横浜線に乗り換え橋本駅へと向かう。 

今日は、この冬の丹沢でやろうと思っていた三つの縦走の内の二つ目、丹沢主脈縦走を道志 焼山登山口からやる予定だ。 

行き慣れた大倉から登るのか道志側から登るのかとても迷った。登山口または下山口となる「道志みち」国道413号線には休日はわずか1往復のバス便しか走っておらず、大倉から登れば下山時に最終バスに間に合うのか?道志側から登ろうすると朝のバスの接続が微妙で、もし渋滞などでバスが遅れた場合、登山口まで辿り着けるのか?という心配があった。 

ただ色々調べていると朝の道志方面行きのバスは、始発のバスが到着してから出発するようだった。 

バスの接続時間の問題さえ解決すれば道志から登るのがベストの選択だった。道志から登り大倉に降りれば、遅くなってもバス便はある。また丹沢山から大倉間は何度も歩いている勝手知ったルートなので、たとえ途中で足でも痛め日没になったとしても迷うことなく降りてくる自信もある。 

7時20分。三ヶ木でバスを乗り継ぎ出発地である焼山登山口へ到着する。ここで7~8人の登山客が降りた。バス停のすぐ脇に神社があり、その裏に御手洗がある。とても寒い。辺り一面に真っ白に降り積もった霜の濃さを見ると氷点下にはなっているだろう。 

しかし今日もかなり急ぐ道程。歩けばどうせ直ぐに暑くなるので、今は寒いがジャケットを脱ぎ歩き始める。 

バス道を5~60メートル進んだ先にあるカーブの途中に左方向への分岐がある。道標に従い焼山へ向かう。しばらく林道を進む。同じバスに乗ってきた綺麗な女性二人と挨拶を交わして追い抜く。 

山ガールをただのブームとさげすむ人たちの話を時々耳にするが、僕が山で出会った山ガールな女性たちは皆、登山道でのマナーもわきまえた常識を持った素敵な女性が多かった。よっぽど社会の仕組みを趣味の世界まで持ち込んできたかのような我が道を歩くが如き無愛想で態度のデカイ横柄なオヤジより素晴らしい。 

そして何より、彼女たちと出会うと、どんなキツイ登り道でツライ顔をしていてもビシッと背筋が伸びて笑顔になれる。何とも素晴らしいことではないか(笑) 

登山道の落ち葉の上に粉砂糖で塗したように雪が現れ始める。昨日の晩に丹沢には結構な雪が降ったようだ。バスから眺める山々も白く染まっていた。標高を上げると雪がどんどん深くなってくる。ほぼ新雪をサクッサクッと雪の感触を楽しみながら歩く。雪の踏み後からすると僕の前に歩いている人は多くても3人くらいのようだ。 

しばらく登り、杉林を抜けた辺りでトラバース道を左に分け焼山山頂へ向かう。目前に高さ15メートル程の展望塔が現れる。山頂にある10センチほど雪の覆いかぶさったベンチにザックを置いて展望塔の螺旋階段を上る。意外と高度感があり怖い。展望塔に上がると都心方面に素晴らしい景色が広がっていた。今日は空気も澄みスカイツリーもくっきりと見える。しばし絶景に浸るが、今日はそう悠長にはしておれない。絶景を写真に収めて次のピーク黍殻山に向かう。 

とにかく雪の感覚が気持ちいい。時々動物の足跡が登山道を横切っている。雪が楽しく下ばかり見ていたが、見上げると冬枯れの木々の枝が真っ白い氷で覆われ、太陽の光を反射してキラキラと輝いている。霧氷だ。雲ひとつない快晴の青空に真っ白な霧氷が素晴らしいコントラストを成していた。昨シーズン、何度か表丹沢で霧氷を見たが、ここまで美しい霧氷に出会ったことはなかった。 

焼山と同じくトラバース道を左に分け黍殻山のピークへ登る。黍殻山の山頂は、山頂の標識もなければ何か変電施設のようなものがあるだけで、眺望も貧しく全くつまらない頂だった。そこそこ体力も使う登りだっただけに、ここはトラーバースすればよかったと本気で思った。 

黍殻山から15分程進むと黍殻避難小屋が登山道脇の眼下に見えた。急ぐ旅なので寄らずに通り過ぎようと思ったが何はともあれ覗いてだけはみることにした。 

階段を下ると避難小屋の前はテニスコートが3~4面入るくらいの平坦な広場が広がっていて、所々にベンチがあった。ここにテント張ってのんびり一日過ごしてみたいなと思った。ただ、みんな考えることは同じなのだろう。避難小屋の壁には「丹沢ではテントは禁止」と大きく書かれていた。 

避難小屋は新しくはないが、中には薪ストーブがあり10人程泊まれる感じだった。トイレも完備されており、暖かいシーズンになったら仲間たちを誘ってここで酒を飲んで一晩過ごしたい。 

次第に傾斜が増してきて、さっきまで楽しんでいた雪がだんだん煩わしく感じてくる。砂浜を歩いているように一歩ずつ雪に沈み込むし、傾斜があるので歩みの度に数センチ滑り落ちる。とにかく消耗する。このペースで明るい内に下山できるか気になり始める。 

必死にペースを維持して歩く。坂道を登り切り百メートル程なだらかな登山道を進むと目の前の景色が一気に開け、そこに雄大な富士山の姿が現れた。 

10時31分、姫次到着。ここにこんな展望が待っているとは想像もしていなかったので疲れた身体と気持ちが一気に癒された。また蛭ヶ岳までのコースタイムを見るとこちらも何とかなりそうな感じだったので少しほっとした。小休憩を取り栄養を補給。 

姫次から一旦5~60メートル下る。いつものことだが「どうせまた登るんだから降りなきゃいいのに...」という気持ちになる。下り切ると「原小屋平」、「地蔵平」と名前の付いた平らなブナ林が美しい樹林帯を進むが、目の前にはこれから登る蛭ヶ岳がどっしりと構えている。やがて400メートルを一気に登り上がらなければならない... 

蛭ヶ岳への登りが始まる。登山道が非常によく整備されている。が、しかし丹沢で登山道が整備されているということは、言い換えれば永遠と続く木階段が続くということだ。ここに来ての木階段は本当に堪える。 

途中、樹林帯を抜けた場所から西側に目をやると大室山、檜洞丸などの西丹沢の山々とその後ろに構える富士山の重奏が素晴らしかった。 

山頂に向かって黙々と登る。小屋らしきものが見えてきた。山頂はもうすぐのようだ。 

僕は、このルートから蛭ヶ岳に登るのは初めてだが、過去に何度か蛭ヶ岳に訪れた際、山頂のベンチの脇に通じるこの登山道から必死の形相で登ってくる登山者を、昼ご飯を食べながら何度も見ている。恐らく今は僕も間違いなくその必死な形相の一人として見られているだろう。 

11時55分。何とか予定通り12時前に蛭ヶ岳山頂に到着することができた。持ってきたパックワインで一人乾杯。途中で出会った中年男女のパーティのおばちゃんに、「山頂は360度雲ひとつない快晴だよ」と言われた程ではなかったが、まだまだ素晴らしい展望を望むことができた。 

20分程で昼ご飯を済ませ丹沢山へ向かう。ここからの道は「向かう」というより「帰る」という気持ちになる。まだまだ主脈縦走を成し遂げるには距離も時間も半分強程度なのだが、ここから先は何度か歩いたことのある勝手知った道。しかもここがルートの最高峰であり、この先もまだアップダウンはあるものの気持ちの中では8割は終わった感じがした。最後の難敵はバカ尾根くらいだろうか(笑) 

蛭ヶ岳からの下りは先月に来たときにはなかった木階段が取り付けられていた。確かにかなり侵食された登山道がいくつかに分岐して山頂に続いていた記憶がある。木階段は登る側としては嫌だが登山者の多い丹沢の自然を維持していくためには仕方ないのだろう。 

道志側とは違い、陽のあたる南側は登山道の雪が解けひどいぬかるみになっていた。また、時折、強い西風が吹き寒く感じる。その西風のせいか塔ノ岳から鍋割山稜に掛けて雲が広がり始めた。 

13時23分。丹沢山に到着。今日、丹沢山をピストンすると聞いていた友人Tに出会った。もう急ぐ必要はない。みやま山荘でビールを買い、今日、初めて丹沢山に足を運んだTと30分ほど山話にふける。 

14時前に丹沢山を出発。霧が立ち込め辺りの景色が全く見えなくなる。こういう時は一人で歩いてなくて良かったと思う。景色が楽しめない時の一人歩きほどつまらないことはない。 

14時54分。塔ノ岳を通り過ぎ大倉尾根を下る。何度歩いてもこのバカ尾根には心が折れる。若干、遅い時間帯だがまだまだ多くの人が歩いている。 

登山口近くまで下山するとまだ、紅葉が残っているところがあり、全てが冬になる前の秋の名残を感じる。 

16時44分。大倉登山口到着。丹沢主稜縦走と並んで、今、冬シーズンにやりたいとい思っていた丹沢主脈縦走を達成することができた。 

今シーズン最初に丹沢に本格的な雪が降った翌日ということもあり、とても美しい景色の中、主脈縦走を成し遂げることができてとても満足のいく素晴らしい山行だった。 

次は「甲相国境尾根」を山中湖に向かって縦走したいと思う。 

ルートマップ

ルートデータ

入山日
2011/12/10
下山日
2011/12/10
水平距離
23.0km
最高点
1,673m

トレッキングレポート

焼山登山口バス停前の神社。この裏にトイレがある。
しばらく林道を歩き、右側へ登る登山道に取り付く。朝日を浴びて落葉でふさふさの道が気持ちいい。
次第に雪が現れる。今年初めて雪道歩き。
焼山山頂にある展望台
展望台の上はとにかく絶景。スカイツリーがくっきり見える。この山だけのために登ってもいいと思った。
中央の三連の峰々は丹沢三峰か?
展望台は高さ15メートル程だろうか?景色はいいが高度感があって意外とスリルがある。
雪が降ってから、この道を僕より先に歩いたのは恐らく2人だけ。
雪景色の黍殻山
黍殻山は眺望もなく変圧器のようなものがあるだけだった。正直、トラバースすればよかったと思った...
黍殻避難小屋。せっかくなんで寄ってみる。
黍殻避難小屋前の広場。小屋に「丹沢はテント禁止」と大きく書かれていた。でも気持ちはよく分かる。
黍殻避難小屋の中。掃除が行き届いている。夏に泊まってみたい。外にトイレも有り。
この辺りは特に霧氷が美しかった。少し進んでまた写真を撮る。青、白、緑の色の重奏が素晴らしい。
雪がだんだん深くなってくる。一歩ごとに数センチ滑って体力が消耗される。
この広々とした平坦な道を抜けると...絶景展望の姫次
姫次は広場になっていて休憩には持ってこいの場所だ。
広場の真正面に絶景の富士山がドンと構える。
姫次から一旦、60~70メートル程下る。蛭ヶ岳まで3.2キロ。
表丹沢とは違って人通りも少なく、雪が踏まれてなく最高に気持ちがいい。
山の上に蛭ヶ岳山荘が見える。結構、登るねェ。
登りに差し掛かると丹沢らしい階段が続く...
尾根から振り返る。中央は大室山、左は檜洞丸か?
蛭ヶ岳山荘が見えてきた!
今年2度目の蛭ヶ岳。午前中の雲ひとつない空とは言えないがいい天気だ!
富士山もバッチリ。麓に山中湖もちょこっと見える。
塔ノ岳方面に少し雲が広がってきた。
相模原から東京都心方面
丹沢山へ向かう。蛭ヶ岳直下には11月にはなかった木道が整備されていた。
熊木沢。標高が低いところでも結構雪が降ったようだ。
鬼ヶ岩を見上げる
鬼ヶ岩ノ頭から右に蛭ヶ岳、左に富士山
南向きの尾根は気温が上がり雪が解けて、ひどいぬかるみになっていた。スパッツがないと裾が泥だらけ。
何度も書くが、この笹の尾根は本当に気持ちがいい。
丹沢山、みやま山荘到着。ここの山頂は林に囲まれていて風が防げていい。塔ノ岳が寒い時はこちらが正解。
塔ノ岳に取り巻く雲。雲行きがだんだん怪しくなってきた。
塔ノ岳到着。強い風が吹きざらしでとても寒かった。
大倉登山口からすぐの場所。この辺りはまだ色づいた紅葉が辛うじて残っていた。
暗くなる前に大倉到着。今晩は皆既月食らしい。東の山の端から真ん丸い月がちょうど昇りかけていた。

データ

  • 入山日: 2011年12月10日(土)
  • 下山日: 2011年12月10日(土)
  • 登山エリア: 丹沢山塊
  • 登山ジャンル: 縦走登山
  • 登山スタイル: 日帰り
  • メンバー: ソロ
  • コースタイム: 焼山登山口(7:27)→(8:45)焼山(8:54)→(9:49)黍殻避難小屋(9:58)→(10:31)姫次(10:42)→地蔵平(10:58)→(11:55)蛭ヶ岳(12:14)→(13:23)丹沢山(13:56)→(14:46)塔ノ岳(14:54)→大倉(16:44)
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