偶然とは本当に不思議なものだ。またも大分の人と出会うとは。
下山後、最終宿泊地の上高地のキャンプ場はレジャーキャンプの家族連れでものすごく混んでいてスペースを探すのに苦労したのだが、キャンプ場の端の方に一人用のテントなら何とか張れそうなスペースを見つけ、そこに前もってテントを張っていた年配の二人組の方に断りを入れてテントを設営させてもらったのだが、その方々が久住と直入出身の方だった。
正直、山にいる時は仕事の話は自分からはしないようにしているのではっきりとはわからないのだが、話しぶりから一人はYさんという60代の大分市内の開業医の方で、もう一人の方は医療系の会社を経営しているGさんという方だった。
いずれにしてもこの手の大分にかかわる偶然が度々起こり、やはり出身地には何か不思議な縁があるものなのかと感じてしまう。その夜は酒を飲みながら大分の話を散々して楽しく過ごした。
さて旅の備忘録。
新宿始発の高速バスさわやか信州号で安曇野穂高まで。バス停は穂高駅まで数分のところにあるので便利がいい。そこから登山口の中房温泉まで定期バスでアクセス。
12時に登り始める。登山口に水場あり。今回のルート上には水場がないので(小屋で1リットル200円で購入)4リットル背負って登る。水場が豊富にあるルートは本当にありがたい。
久しぶりの縦走登山、しかも冬山装備を背負ているのでしんどい。合戦小屋から先の急登でバテバテ。普段、それなりに走ったりはしているのだがやはり登る筋力は別もの。
15:45 燕山荘到着。疲れてヘトヘトだがここは稜線の雪上のテント場、風の心配があるので雪を掘ってサイトを整地。
2日目
4時起床。テントから出ると目の前に夏毛に変わり始めたライチョウが2匹。すぐに準備して燕岳山頂へ。4時50分過ぎご来光。何度見てもつい手を合わせてしまう。
7:12 今日の行程は長くないのでゆっくり出発。山小屋で注意されたように蛙岩(げえろいわ)の中をくぐる。蛙岩内は雪がないぶん岩で険しい。穴も狭いのでザックが引っかかり通りずらい。抜けて夏道を覗いてみたがもう安全に通れそうな感じだった。
喜作新道を右に分け、そのすぐ先から大天井岳を直登。大天荘までの夏道は遅くまで雪が覆い雪崩の危険があるので冬ルートは直登になる。これも燕山荘で注意される。
時間が早かったので少しルートを外れ横通岳山頂に登ってみる。マイナー山だけあって誰も人がおらず満足な時間を過ごせた。真正面にそびえる常念岳を眺めるにはいい場所だ。
13:27 常念小屋到着。すでにテントが20張りほど。ここのテント場はもう雪はない。また燕山荘ほど風の心配がないように思えるが、鞍部になるので逆に吹くと強いのか?
燕岳から常念小屋まではさすが表銀座ルートの一部だけあって、アップダウンも少なく槍穂の絶景を眺めながら歩ける素晴らしい散歩道という感じだった。またいつか歩きたい。
3日目
4時起床、今日も5時前にテント場からご来光を眺める。今日も快晴のよう。
5:45 出発。いきなり常念岳へ400メートル登り上がる。いとものことだが3日目になると体が山に慣れてきて一気に体が軽くなる。
常念岳で絶景の槍穂を拝んだ後、さっき登った分だけ一気に下る。そこから先、樹林帯に入り大きめのアップダウンを繰り返す。樹林帯はまだ多く雪が残っている。結局、この区間でアイゼンは使用しなかったのだが、下りに関しては使用した方が安全に歩きやすいと思う。最後に蝶槍に向けて200メートルほど登り返す。途中で雪が切れ夏道に。
9:50 蝶槍到着。見慣れているのかやはりこちらの角度から見る槍ヶ岳が一番かっこいい。蝶槍から蝶ヶ岳まではなだらかな30分ほどの尾根道。真正面に槍穂が聳え最高に気持ちがいい。
10:45 蝶ヶ岳ヒュッテ到着。小屋で明日の天気を確認すると雨マークが出ているということ。晴れるならここのテント場に泊まって明日降りようと思ったのだが、稜線のテント場で雨に降られたら風も強そうでテントの撤収も面倒なので、今日中に上高地に降ることに。
11:28 蝶ヶ岳の開けた山頂でビールを一本飲んで長塀尾根から下山。蝶ヶ岳山頂直下で登ってきた登山者に聞くと下までずっと雪道ということで、初めてアイゼンを装着。長塀尾根はずっと樹林帯で展望も開けず、長く、標高差もあり…ここを登るのは辛そう。
13:36 徳沢到着。一気に観光地。ふきのとうとニリンソウがいたるところに咲き乱れている。
徳沢から明神館に向かって2キロほど行ったところで、50メートルくらい先の道をクマが横切る。初めて野生のクマを見た。しかも大きい。上高地周辺は最近よくクマが出るとは話には聞いていたが、よくもこんな観光客でごった返すところに…
15:00 最終宿泊地の小梨平キャンプ場に到着。すでにすごい数のテントが張られている。夜半過ぎに雨が降るが翌朝はやんでいて助かった。始発便8:00上高地発のバスに乗って帰路に。
今年は北アルプスの色んなルートを歩きたいと思っていたので、こんな早めの時期にこのルートを歩くことができて良かった。冬山には冬山の楽しさがあり、日帰り登山は、それはそれでいいが、やはり数日かけてする縦走登山が一番好きだと思った。